三典・三式のロジックの紹介
阿藤 大昇編

 子平は、六十甲子(干支暦)をもとに人が誕生した瞬間の年月日時を八文字の配列に変換し命式を作成して、さらに大運と年運と月運といった命に対する運というものを並べて運命を推し量ろうとした。中国の唐宋の伝統では運命というものを六十甲子のバランスを取ることにあると考えていたので「子平」と呼ばれ、現代では、年月日時の四つの時間柱をもとに推命するので「四柱推命」と一般的に呼ばれている。
 どのように三典三式を使って運命を看ていくのかということを紹介しよう。最近話題となったZARDの故坂井泉水さんの命式を分析してみよう。
丁未 10歳~14歳 15歳~19歳
化木干合(            
壬寅(甲) 20歳~24歳 25歳~29歳
辛丑 30歳~34歳 35歳~39歳 長生
壬辰 40歳~44歳 45歳~49歳 沐浴
 
2006年 40歳 丙戌歳 十二運 衰 忌神 倶灰(絶望)  
2007年 41歳 丁亥歳 十二運 病 忌神 妄登(無謀)  

 彼女は、1967年2月6日8持42分に神奈川で誕生しており、神奈川の地方時間が+19分あるので、巳の刻となるが、丁度この季節の均時差が-14分なので、相殺すると辰の刻となる。これは筆者の経験上、地方時間と均時差を加味して生時を決定した方が良いようだ。
 まず五行の強弱を求める。(『皇龍』のソフトでは子平命式の下に表示している。)
木行は、二干三支当令= 54点 年の丁と月の壬が変化干合して木に化神する
金行は、一干一支= 2点  
水行は、一干二支= 4点  

 木行の財帠が多く、日主が弱いため、格局は外格の「従財格」となる。
 格局の解釈は、古典の『百章歌』の「棄命従財歌」にこうある。
日主無根財犯重 全憑時印助身宮
逢財必主興家業 破印粉粉摠是空
 日主が無根で財が重ねて犯し、全うしても時に印が憑けば身宮を助ける。
 財に逢えば必ず主の家業が興り、印が破れば粉粉、総てがこれ空し。
 「日主無根」とは日主が非常に弱いことを指し、「財重犯」は財が多いことを指す。しかし財が全うした命式であっても時干に印が憑いた場合は、「助身宮」とは日主を助ける命式、つまり内格となる。「逢財」とは運勢で財に逢うとき、必ず家業が発展し、破印とは印が財を破ることで、内紛が生じて今まで築いたものをすべて失って空しくなるとしている。
 このような見解によって坂井泉水さんの命式をみていくと、大運の10歳~19歳の癸卯、20歳~29歳の甲辰は共に原文が示すように「逢財」の財運が来たので大いに事業が発展したといえる。そして30歳~34歳の乙までが財運であったが、34歳~39歳巳(金と火の根をもつ)の運より日主を強める運なので凶運となっている。そして40歳~44歳の丙は日主辛と倍加干合となり、火は辛を焼きまた火は体神の木(化神)を洩らすので、彼女の命式では大凶となる。そして流年の2006年の丙戌歳は、火が合計三干三支=27点で、通変星が現す官殺は、病気や災難を現し、この時期に病気が発症したものと考えられる。2007年の丁亥歳は、時干の壬と丁が化木したが、流年支の亥と命式の月支と合して用途を失っており、財が四干二支当令=36点となるものの従格の点数が本来の点数より減少するのは大凶であり、従財格の本体の根である月支寅を抜き取られるのは、致命的といえるだろう。
 彼女の命式は、大運の第1運と第2運に最も良い財の運勢が来るので、「花開けば水必ず平ら」といって必ず世に出て成功する命といわれている。辛日主に対する時干の壬は、珠玉を流水で洗うという調候用神の喜神であるが、4点では非常に弱く、人生の禍福面において幸多いとはいえないようだ。そして体神の化神は、『子平女命賦』には「丁壬化合暁詩書」とあり、詩や書に通達しているとある。『子平四言獨歩』には「十干化神、有影無形、無中生有、福禄難憑」とあり、十干の化神は影があって形がなく、無の中から有が生じ、福禄は憑き難しとしている。この詩はまさに彼女の運命を象徴しているように想える。
 卜易推命も世爻子兄弟が-1点で健康面に問題があり、大運の四爻申父母も-4点で大凶である。
 七政命理は、身宮に太陽が会しているので社会において政治的なリーダーシップを取る役割があったようだ。2007年の彼女の運勢は木星と身宮が冲・命宮が刑と大凶であり、まさに命の危険を示唆している。彼女の身宮が田宅宮と一緒になっているので、そのとき住んでいた住居(病院)に関連して問題が生起したと考えられる。
 紫薇命理では、彼女の紫薇命盤の命宮戌に太陰(化禄)・右弼があり、詩文を好む風流な性格でまさにアーティストの命といえる。12宮で最も悪い宮は、疾厄宮でしかも人生の大事を現す身宮にも重なっている。そしてその巳宮には陥の陀羅の凶星が逢っている。
 太乙命理は、財帠宮に文昌があり、アーティスト活動で財を得ることを象徴している。疾厄宮には始撃・太歳の凶星がある。
 遁甲命理は、命宮に丁丁・任休・五符があり、文章によって成功する。
 六壬命理は、第一課午に太常官鬼があり、衣食住を提供する職業に適している。
 以上をまとめると坂井泉水さんの命はアーティストととして非凡な才能をもっており、社会的に多くの人々に詩文の感動を与え不幸や困難に立ち向かっていく勇気と希望を説く大きな役割を担っていたようだ。ただ美人薄命であったことが惜しまれる。




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