三典・三式の主要研究文献の紹介
阿藤 大昇編

子平

『徐大昇子平三命通変三巻』 千頃堂書目
『劉基三命奇談滴天髄一巻』 明史藝文志
『三命滴天髄一巻』 傳正楼書目

現存する最古の資料は以下の通りである。

『刻京臺増補淵海子平大全六巻』 明刊本 日本 宮内庁書陵部
『新鍥誠意伯秘授玄徹通旨滴天髄上下二巻』 明抄本 台湾 国家図書館・善本書目

 子平の主要文献は中国宋代の徐大昇の『子平三命通変三巻』であり、主に『歌訣』に書かれている格局推命の見解は、人間の存在の真髄を説いており、明代の劉伯温の『滴天髄』は、徐大昇が説かなかった子平の理論を展開して十干を主体とした用神推命と体神推命を解き明かしている。用神推命は存在の禍福面における人が自分の損得を超えて本当に求めるものが何であるかを論じ、体神推命は存在そのものの本質を根本から見直してどうのように在るべきかを論じるものである。この後『欄江網』や『子平真詮』などの子平が登場するが、唐宋に既に完成していた子平推命を歪める原因となってしまったようだ。

紫微・紫薇

『紫微星訣』 不明・清写本 香港 八卦斎図書公司
『紫微斗数三巻』 不明・清写本 台湾 道蔵

『星訣』は四巻で構成されており、写本として一般に論じられていないオリジナルの紫微斗数である。特に格局の部分や独自な見解による解釈が述べられている。紫薇の資料は一般の資料として残されていないので、疑問視されているが、後述する『皇極数』の劉伯温先生増の部分に明らかに「紫薇斗数」という記載があり、一般の研究者の研究不足と言って良いだろう。道蔵の紫微斗数は十八飛星策天紫微斗数とも呼ばれ研究している人は非常に少ないようだ。筆者の体験ではある一派のインド占星術に非常に似通った判断をしているものと共通するようだ。(十八飛星策天紫微斗数は『皇龍』でソフト化されている。)

奇門遁甲

『奇門遁甲秘笈大全』 劉基撰   明刊本
『奇門遁甲十巻』 青田劉基 中国 故宮博物院図書館
『奇門遁甲金鏡寶鑑六巻』 郁離子伯温輯 中国 故宮博物院図書館
『奇門遁甲便覧』 不明 中国 故宮博物院図書館
『太乙紫微靈臺秘典九総八卦造宅三白都天撼龍経』 不明 清抄本 中国 上海図書館
『御定奇門寶鑑三巻』 清王禹吾撰 中国 北京大学図書館・李氏書目
『御定奇門寶鑑六巻』 不明 中国 故宮博物院図書館
『奇門遁甲統宗九巻奇門外傳』          清抄本 中国 上海図書館
『奇門遁甲統宗大全』 不明   清刊本

明代の奇門遁甲は劉基の著作が多く残されており、一般の刊本として出版されたものとそれとは別に写本として残されたものがある。これは筆者の最新の研究の成果であり、明代の奇門遁甲が清代の奇門遁甲に受け継がれたようだ。特筆すべきは、劉基のペンネームである郁離子が使われている『奇門遁甲金鏡寶鑑』には現代に伝わった明澄透派の説く奇門遁甲(『奇門天書』『奇門地書』『奇門大法』)に通じる内容が書かれている。

太乙

『太乙金鏡式經』 唐代 王希明著 四庫全書 台湾 武陵出版
『太乙淘金歌一巻』 宋代 丘□撰 清抄本 中国 北京大学図書館・李氏書目
『太乙原古二巻』 明代 不明   中国 北京大学図書館・李氏書目
『太乙統宗寶鑑』 元代 曉山老人撰   台湾 国家図書館・善本書目
『太乙遁局』 明代 不明   台湾 国家図書館・善本書目
『太乙命書』 明代 潘元焯著   香港 八卦斎図書公司
『武備志』 明代     日本 汲古書院
『太乙六壬二占要略』 文化12年 河原田寛撰   日本 国会図書館
『太乙統宗大全』 清代     中国 台湾
『柚里乾坤太乙十二巻』 清代 楊若愚撰 清抄本 中国 北京大学図書館・李氏書目
『太乙神数』 清代 古今図書集成   台湾 集文書局
『太乙神数講義』 原稿 張明澄(張耀文)口授、竹内一景/篠原曠安著

明代の太乙は『太乙淘金歌』に始まり、現代の研究では故張明澄先生の講義録が一番わかりやすく書かれている。太乙命理に関しては『太乙命書』に諸星の複雑な配合によって太乙命理を論じる内容が詳しく書かれている。

六壬

『六壬銅銀匙二巻』 不明・明写本 台湾   張乃曾氏 所有
『壬歸』 不明・写本の珍蔵版 台湾 武陵出版 1993年 絶版

 『大六壬銅匙一巻』『小六壬銀匙一巻』は故張明澄先生が台湾から写本として日本にもたらしたが、一般に公開できない資料だったので世に出なかったのが惜しまれる。
 『壬歸』は六壬の理論面と実践面の到達点と可能性を明らかにしたものであり、実際に占った箇所が豊富に書かれており、現代の六壬の研究に新たな展開を見せてくれるだろう。

鉄版神数

『皇極定数』 宋代 邵康節原著 劉基註 中国 上海図書館
『皇極数』 宋代 邵康節原著 劉伯温註 中国 上海図書館
『邵子神数』 宋代 邵康節原著   中国 台湾
『鉄版神数』 宋代 邵康節原著   中国 上海図書館・上海錦章書局
『先天蠢子数』 宋代 邵伯温著   中国 上海図書館

最近『鉄版神数』の研究が盛んに行われており、多くの私蔵の異なったテキストが出版されている。筆者の研究では、上海図書館に鉄版神数のもととなったオリジナルのテキストが収蔵されており、この資料は鉄版神数の秘密のベールを解く鍵になると言って良いだろう。特に劉伯温の注釈した『皇極数』に秘訣の詩訣が書かれており、これは一般の著作には載っていないようだ。(これも異なるバージョンがある。つまり口伝であるからだ。)

 参考までにその『詩訣』を以下に紹介しよう。
先天算法
 先将本命四柱立 依着先天用数数
 数行何宮卦内行 仍将先天法数覩
 合算其命事不真 時刻差錯陰陽忤
 再将別刻細推尋 刻得時真方得所
 太衍数法乃施行 配合本命為卦主
 萬物原従太極生 一政萬象数之祖
 陰陽次位二千居 日上生時百順数
 時日皆従子上輪 十零本位月休覩
 歳君水火二七加 金木無加五十土
 再将一二三四五 配却金木水火土
 配後還加数一千 包蔵四序為歳主
 得策当先尋納音 日時順逆還失譜
 復于本卦弁陰陽 進退益虚須減補
 陰陽陽兮順数行 行宮須向先天取
 陽見陽兮送数排 法用後天為卦主
 遂一依法細推求 壽夭窮通如目覩




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